自動運転技術を学ぼう!自動車先進国ドイツの最新テクノロジー

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ドイツのサプライヤー/メーカーと自動運転への取り組み

最後に、ドイツのサプライヤーとメーカーが、どのように自動運転に取り組んでいるのかを解説します。自動車が主要産業であるドイツでは、サプライヤー単独でもコンチネンタル、ボッシュ、ZFが自動運転システムの開発を行っています。これは将来的に、諸外国を含め、自動車メーカーにシステムを売り込むことを視野に入れた取り組みです。並行してメーカーもメルセデス・ベンツ、BMW、アウディが自動運転の開発を続けています。

コンチネンタル

世界各国でテストを行う、VWパサートをベースにしたコンチネンタルの自動運転実験車http://www.continental-corporation.com

ブレーキ介入型のACCをいち早く実用化するなど、コンチネンタルは自動運転に対して常に積極的な取り組みを見せてきました。2011年からはフォルクスワーゲン・パサートをベースとした実証実験車を開発し、ヨーロッパ、アメリカ、日本など世界中で実証実験を行っています。

コンチネンタルは、ACCなどで実用化されたセンサー群を応用しています。前方監視はステレオの光学カメラと長距離レーダーを併用、また車体の4隅でも短距離レーダーが周囲を監視し、これらの情報を解析して自動運転を行います。また、室内を撮影するインテリアカメラでドライバーの状態も把握しています。これらにより、コンチネンタルは高速道路で、2016年にレベル3相当の自動運転を、2020年にレベル4相当の自動運転の実現を目指しています。

また、コンチネンタルは到達目標として、一般道路を含めたレベル5相当の完全自動運転も視野に入れています。ただし、この実現のためには他車との相互通信や、より高度な情報解析が必要であり、少なくとも2025年以降になるとしています。

コンチネンタルはこの分野でIBMやシスコとの協業を行い、2015年にフィンランドのソフトウェア会社のエレクトロビットの自動車部門を、2016年にはアメリカのレーザー技術のメーカー、アドバンスト・サイエンティフィック・コンセプツの車載イメージセンサー部門を買収するなど、実用化に対して準備を進めています。一方で情報解析のためには通常の12Vバッテリーでは電源が間に合わないという問題が発生しています。コンチネンタルは48Vバッテリーの必要性に言及していますが、自動車自体の設計に関わるので、協調する自動車メーカーの有無に先行きが委ねられます。

ボッシュ

天井の360度スキャナーを利用するBMW 3シリーズベースのボッシュの初期の自動運転実験車http://www.thecarconnection.com

ボッシュは世界最大のメガサプライヤーですが、ACCは数社に供給するも、本格的な自動運転技術ではやや乗り遅れ気味でした。しかし加速、減速、操舵に関して種々の技術を持ち、製品を開発・販売してきたボッシュは、段階的な自動運転を実現させることに意欲を示しています。

2013年には、他社の実験車でも使われているアメリカのVelodyne製の360度のレーザースキャナーを天井に搭載したBMW・3シリーズのステーションワゴンベースの実験車を公開しました。これは前後長距離レーダー、前後左右計6つの中距離レーダー、ステレオカメラ、単眼カメラなど、全てを注ぎ込んだ物量型で実証実験を行っていましたが、Velodyneのレーザースキャナーは6万ユーロ以上の高価な製品で、実証実験用の域を出ていませんでした。

2015年にはアメリカの電気自動車であるテスラ・タイプSをベースにした第2弾の実験車が登場、レーザースキャナーは小型のものを前後左右6つの搭載に改められ、中距離ミリ波レーダーを4つに減らし、単眼カメラも廃止されています。これに全地球航法衛星システム(GNSS)や加速度センサー、ジャイロセンサーを組み合わせ、3Dのデジタルマップであるエレクトロニック・ホライズンとのマッチングを行うことで、ボッシュは他社との差を一気に詰めています。

ボッシュの強みは、全てのセンサー類を自社で開発できることにあります。今回の実験車では、レーザースキャナーはドイツのIbeo Automotive Systemsの製品を利用していますが、将来的にはこれも内製に切り替えることをボッシュは示唆しています。

ZF

アウトバーンで実証実験を行うZFの自動運転実験車http://autoweek.com

ZFもボッシュ同様に、自動運転の分野では出遅れた感がありました。しかし2015年5月、アメリカのTRWを買収して、ZF TRWとして自動運転分野での存在感を高めつつあり、オペルのステーションワゴンをベースとした実験車で、高速道路での実証実験を行っています。

ZFはセンサーをミリ波レーダーとモノカメラのみとした極めてシンプルな構造としており、価格面で優位性を発揮する戦略です。実用化までには三眼式のカメラ(ステレオカメラとモノカメラの組み合わせとして機能、魚眼と長距離検知などの役割分担も行う予定)を投入し、2017年にレベル3ないし4での高速での自動運転を目指しています。また将来的にはクラウド上のデータや、安価な360度スキャナーの投入などで、市街地での自動運転も視野に入れています。

BMW x コンチネンタル

サーキットでドリフトを行うBMWの自動運転実験車https://www.youtube.com

ドイツの自動車メーカーの中で積極的にサプライヤーとの協業を行っているのはBMWです。パートナーはコンチネンタルですが、コンチネンタル独自の開発とは、また異なるアプローチを行っています。特筆すべきはサーキットでの実証実験を行っていることで、サーキット走行のインストラクターとしてもシステムを機能させるなど、駆け抜ける喜びというコンセプトを体現する方針です。

センサーはモノカメラ、ステレオカメラ、ミリ波レーダー、レーザースキャナー、そして超音波センサーまでも総動員し、またSLAMと呼ばれる、GPSなどに依存せずに周囲のセンシングで自動的に地図を生成する航法システムの採用が検討されています。

2015年には、最新の7シリーズで、ドライバーが不在の無人の状態で駐車を行う機能をオプション設定、極めて限定的な状況ですが、レベル4の自動運転を実現しました。今後高速道路で、レベル4の自動運転ができることを到達目標としています。

さらにBMWは2016年7月にはアメリカのIntel、イスラエルのMobileEyeと提携、自動運転車の市販投入に向けた取り組みを加速させています。

メルセデス・ベンツ x カールスルーエ工科大学

ベンツにとって歴史的なルートを自動運転で辿った2013年の実証実験http://www.autoblog.com

ACC開発はコンチネンタルと協業していたメルセデス・ベンツですが、自動運転システムの開発に際しては、サプライヤーとの協業ではなく、産学連携で行うという方針を取りました。当初、このプロジェクトには、ノキアも参加していました。

ブレーキ介入型のACCの投入から20年近くが経過し、精度を上げ続けているメルセデス・ベンツは、既に多くのモデルでレベル1相当の自動運転を行っていましたが、2013年以降の新型モデルではステアリングに手を添えていればある程度の転舵をしてくれるなど、かなりレベル2に近い自動運転を達成しており、部分自動運転を標榜しています。2016年には、レベル4を見据えた、ドライバー体調不良時の安全な停止システムなども実用化されています。

最終的にはレベル5を到達目標として掲げています。実際に2013年にステレオカメラ、ミリ波レーダー、超音波センサーにGPS情報を組み合わせたSクラスで、かつて、創業者であるカール・ベンツの妻ベルタが1888年に走った100kmの道のりの完全な自動運転に成功しています。

参考URL:2013年試験走行

フォルクスワーゲン(VW)グループ

自動運転をアピールするアウディA7の自動運転実験車http://fortune.com

VWは2011年から、EUが資金を出すプロジェクト「HAVEit」に参画していました。当初の目標は高速道路でのレベル3相当の自動運転でしたが、現在はグループ内のアウディが研究開発を主導する体制に移行し、A7をベースにした実験車では2015年にアメリカのシリコンバレーからラスベガスまで、855kmを走破する実証実験に成功しています。センサーは前だけではなく後方にもステレオカメラを搭載、加えてミリ波レーダー、レーザースキャナー、超音波センサーを組み合わせ、地図を自動生成するSLAMとの連携も行います。

最終目標はレベル5としていますが、フラッグシップのセダンであるA8には、レベル4相当の自動運転を、2017年にも部分的に導入することを示唆しています。

参考URL:HAVEit

総括

元来ハードルの高かった自動運転ですが、コンピューターの進化と低コスト化、ドイツ政府などの積極的な取り組み、そしてサプライヤーによる、IT関連企業の積極的な買収策を含めた自動運転技術への取り組みにより、2020年に、ドライバーが長時間に渡り手足を離した自動運転は、実現する可能性が非常に高くなっています。

しかし、その先は、自動車自体の部品規格の変更、高度な法整備と各国での連携などが必要となり、今後自動運転実現のボトルネックとなるのは、技術面でのハードルから、メーカーや政府の思惑の軋轢へと移りつつあります。

ACCや操舵支援機能については、搭載している自動車の母数がまだ絶対的に少なく、開発側が主張するほどの効果が統計的に示されるほどの状態にはありません。自動運転が本当に事故を減らすのかというのも、開発側の主張の域を超えず、実際にメーカーが許容する範囲を超えて自動運転を行った結果、事故に繋がった例も報道されるようになりました。

自動運転の技術が、交通の安全性の向上や、利用者のQOLの向上に確実に繋がることが認知され、開発者や関係各所が完全な連携を取れるようになり導入がスムーズに進むには、あと少し時間がかかりそうです。そして何よりも、利用者が自動運転の内容を正しく理解し、安全に運用することが求められていくでしょう。

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この記事へのコメント 18

  • リリオ のプロフィール写真 リリオ より:

    最近話題の自動運転技術は昔から研究されていたとは知りませんでした。実用化にはまだ数多くのハードルがありますがそのうち昔想像していた未来の車が道路を走ると思うとワクワクします!

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  • kimura12548 のプロフィール写真 kimura12548 より:

    自動運転研究の歴史について。大変、興味深く読ませて頂けました。
    ちなみに、自動運転自動車はAuto ohne Fahrer
    http://www.dw.com/de/auto-ohne-fahrer/a-18727866
    法整備の観点では、事故を起こしたときの責任の所在が難しそうですね。

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  • kisetu-ju のプロフィール写真 kisetu-ju より:

    さすがドイツといえばベンツと言われるほど自動車産業が発展していると思いますACCすばらしい開発だと本当に思います。現在でも一部自動運転になっています。ドイツは早いうちから取り組んでおりベンツのCMをみるとうっとりすることがあります。
    自動にすることで非常に便利になりますが、人としてすべき判断が鈍るようになると思います。「おさきに」「どうも」などということもなくなるのでしょう。人に対して、車より弱いものに対する対応はコンピュータでは止められないことがあるでしょう。
    すべてを自動化するのではなく、突発で対応しなくてはならないことは今まで通りが良いと思います。

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  • Sine のプロフィール写真 Sine より:

    高度自動運転の技術が確立されて、ドライバーが不要となると、今まで車関係の仕事、たとえばタクシー運転手、ものを配送する人、バス運転手、自動車教習所で働く人の職を奪ってしまわないだろうか?
    なんでも機械に頼るというのは、あまり勧められない。機械は故障する必要はあるしそれを修理するのは人間だから。また、自動車の場合、急な出来事たとえば、人の飛び出しなどのような急な事態に臨機応変に対応できるかどうかが疑問。所詮、機械は機械、人間が機械を操るのであって、機械によって人間が支配されてはいけない。

    6
  • Zenn のプロフィール写真 Zenn より:

    自動運転は2020年が一つの目標らしいです。ということは東京オリンピックで、マラソンの先導車あたりから実現するのでしょうか。ドイツはもうISOの策定に動いている(さすがに自動車王国)のですね。日本では個人的に、ステレオカメラのスバルを応援したいです。

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  • まいける のプロフィール写真 まいける より:

    アウトバーン走行を自動運転にするというのはよいでしょう。高速道路は比較的自動運転に向いているし、運転者の誤操作が大きな事故に結びつくので、事故防止には効果がありそうです。

    5
  • 創聖 中川 のプロフィール写真 創聖 より:

    高度自動運転が速く実行されてほしいなあと思います。そしたら交通事故も減ったり免許もいらなくなるでしょうから。
    車関係の仕事がなくなるといっている人もいますが、実際それは仕方のないことですし将来、仕事の約半分がなくなるといわれていますから。
    別に車関係の人達だけが仕事がなくなるというわかではないです。

    4
  • UP3B1ZiDfPVDCsa のプロフィール写真 UP3B1ZiDfPVDCsa より:

    自動運転技術に関しては、車校の人も言ってたけど人を殺めてしまった場合に誰が責任をとるかってとこにも問題があってなかなか難しいらしいけど、上手くいけば事故が今よりも格段に減るものだと思う。

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  • jpeg2016 のプロフィール写真 jpeg2016 より:

    事故が減り、環境負荷が減ってくれると良いですね。人間が介在するとどうしても事故が起きてしまうのでしょう。

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  • 直人 東條 のプロフィール写真 直人 より:

    車の自動運転について考えてみましたが、自動運転は採用するべきではないと思います。車の運転に実力がなく、自動運転に依存しても、事故は避けられないんじゃないのかと思ったからです。たとえば、人をひいたり、車とぶつかったりという事故が起こっていく中、自動運転でも前に車や人がいたら簡単に止まるとは思えません。

    2
  • こういち のプロフィール写真 こういち より:

    ドイツの自動車産業はワーゲンの不正があったとはいえ、世界をリードするものでしょう。
    自動運転は交通事故を減らすという社会的にも意義が大きいことだと思います。
    日米ともども競い合ってより安全な自動運転技術を構築してほしいものです。

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  • きょんちー のプロフィール写真 きょんちー より:

    さすがドイツです。いつか何もしなくていい日が来るのを心待ちにしています。

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  • あおい のプロフィール写真 あおい より:

    ドイツは先進国ですね。人々の安全を考えて自動運転の世界に切り替わることはまさに神です。

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  • 仮面サラリーマン のプロフィール写真 仮面サラリーマン より:

    コンチネンタルというメーカーはタイヤメーカーから自動運転技術で世界有数のメーカーに生まれ変わって世界のトップを走ってます。日本はZMPが上場延期なったりして大丈夫でしようか。

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  • yusuke のプロフィール写真 yusuke より:

    夢のある技術ですね~

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  • hirokin888 のプロフィール写真 hirokin888 より:

    アメリカのTVドラマ「ナイトライダー」が現実のものに。自動運転技術開発はドイツメーカーに頑張って欲しいものである。話は変わって、自動車外装に関して、一体型のクリアレンズ、クリアカバーは欧州発だと聞いたが、情けない話である。太陽光の差し込み角度によって、対向車や歩行者から非常に見えにくい場合がある。デザインより安全性を重視するべきと思う。欧州の一部の学者による研究もある。方向指示器用黄色カバーやその独立カバーを採用したからといって、どんな不都合があるのか?車づくりの基本に立ち返って貰いたいものである。

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  • かすたーど のプロフィール写真 かすたーど より:

    自動運転技術はどんどん進歩していますね。それをいかに安全に利用していけるかがポイントだと思います。

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  • iudex のプロフィール写真 iudex より:

    前の車との距離を計って速度を調整。。。これは是非日中の高速道路で使わしてもらいたい!!
    どうしても日中の高速道路は睡魔に脅かされる。。。 
    そういえば、レンタカーした時に、休憩しなさいって車が教えてくれた!!あれはどこのメーカーやったやろ。。。

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Kotaro Harakawa のプロフィール写真
writer, medical doctor, JAPAN MENSA member


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