働かなくてもお金を得られる社会~ドイツで再燃するベーシックインカム導入論~

全く働くことなく生活に必要なお金が手に入る。そんな夢のような社会が存在するとしたら、あなたはどうするだろうか?

ヨーロッパ諸国では、このような社会を実現しようと、ベーシックインカムの導入についてまじめな議論が繰り広げられている。

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スイスで導入?ベーシックインカムとは?

2016年に、スイスでベーシックインカムについての国民投票が行われることが決定した。これが通れば、世界で初めて無条件のベーシックインカムが導入されることとなる。「人間が生きていくのに必要な分のお金を、何の条件もなく認める」というのがこのベーシックインカムの考え方だ。これはスイスでは、一人あたり月額2500スイスフラン(約30万円)という金額にあたる。

ベーシックインカムは人間の本質を問うているため、意見が分かれる。とくにそこで浮かび上がるのは、次の二つの問いである。

一つ目。「自分は何がしたいのか?」。収入を気にしなくてもよくなったとして、自分なら何をする?自分の思い通りに決められるなら、どんな活動をしたいだろう?この一つ目の問いは、一人一人が自分自身に投げかけることになる。決定権を持つ個人としての自分の意志を問われる。誰もが思い描く自分自身の理想像が問われるのだ。

二つ目。「生活に必要な金額が無条件であらゆる人に与えられることを、自分は認めることができるだろうか?」書類への記入や、能力の証明なしにベーシックインカムが受け取れる。そういう状況を想像できるだろうか?自分の人生は自分で決めろ、と誰もに言えるだろうか?この二つ目の問いに答えるには、決定権を持つ個人として他人を見ることが求められる。自分は、他人に対してどのような像を思い描いているだろう?

ドイツで白熱する議論

隣国スイスでの動きを受けて、ドイツでも様々な意見が飛び交っている。なんとかベーシックインカムを導入しようと、寄付金を募り、抽選で当選した人に月1000ユーロの基本金を渡し、実際の生活にどう影響するのかをテストしている団体もある。

ドイツでベーシックインカムを取り入れようとするとき、まず二つの偏見にぶつかる。この制度を採用すれば誰も働かなくなる、また、どちらにせよ元になる資金をまかなうことができない、という二つの意見である。ベーシックインカムが何をもたらすのかについて議論する前に、まずはこの壁を突破しなければならない。実際には、仕事の義務に苦しむ多くの人が、基本権としてのベーシックインカムを切望している。

ベーシックインカムに反対する意見

ベーシックインカムに反対する人が常に強調する点がある。仕事をせずに怠ける人が増える、というものである。しかし人は、やりたくもないことを義務としてやらなければならないとき、怠惰になる。現在の社会は、私たちに「自分を曲げる」ことを要求してくる。そうやって、人間同士が互いに傷つけあっている。ベーシックインカムは、こうした危険から人間を守る。

働かなくても生きていけるだけのお金は受け取れるため、無理に周りに合わせてまで、やりたくもない仕事をしなくてもよくなるのだ。怠惰な人が増えるどころか、自分の関心に適った仕事をすることで、むしろ社会全体で見た効率は上がるのではないだろうか。

全員にベーシックインカムを与えるだけの資金をいったいどうやってまかなうのか、という疑念の声もある。この意見の裏には、公に主張する者は少ないが、ある懸念があることが多い。ポイントは、“全員に”である。ベーシックインカムを認めるということは、自分が嫌いな人もお金を受け取ることを意味するのだ。

ベーシックインカムについて考えるときに問題となるのはお金だけではない。財政的な観点からいうと、個人にとってはプラスもマイナスもないのがこのベーシックインカムという制度なのだ。今までの収入に加えてお金をもらえるわけではない。その名の通り、生活の基本となるべきお金なのである。ベーシックインカムの将来は、“無条件”という点が、個人の能力や社会全体の成果を促進するのか、それとも阻害するのか、にかかっているともいえるだろう。

今、考えるべきこと

スイスでの導入の動きを受け、ドイツでも頻繁に話題に上るようになったベーシックインカム。解決されるべき問題や疑問は少なくないが、うまくゆけば人々の生活の質を向上させるかもしれない。

まだ実現は遠くとも、ベーシックインカムが投げかける問いに自分なりの答えを用意しておくことが大切だ。働かなくても生きてゆけるだけのお金があるとして、自分なら何をするだろうか?自宅でテレビを観るとか、毎日ゲームをするとか、そういった答えが多いようなら、この制度を取り入れる意味はない。収入のためでなく、自分の関心や社会のために、心から情熱を注げる。

自分にとってそんな仕事とは何だろうか。スイスでの実例やドイツでの実験の報告を待ちながら、誰もが一度はじっくり考えてみるべきテーマだと思う。

参考記事:
Lasst Arbeit Erfüllung werden

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tomo のプロフィール写真
1992年高知県生まれ。愛知県立大学外国語学部を卒業し、専攻したドイツ語を生かしたいと思い到り、渡独。 現在ドイツのフランクフルトに在住、スポーツ関係のベンチャー企業でのインターンシップに参加している。翻訳者として一語一語丁寧に、ライターとして読者に新たな気づきを与えることを心がけ、執筆活動に取り組む。


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