ドイツはなぜ中小企業が強いのか?ドイツの中小企業支援プログラムまとめ

スポンサーリンク

ドイツは中小企業にもビジネスチャンスが豊富

ドイツは法人税が低く抑えられていることから、企業にとって新たなビジネスチャンスを模索するにはうってつけの環境が揃っていると言える。それは大企業のみならず、中小企業にとっても例外ではない。日本以上に、ドイツの中小企業におけるビジネスはチャンスと可能性にあふれているのだ。

意外に思う節もあるかも知れないが、ドイツは国内経済で好調な製造業関連の分野において、フォルクスワーゲンやメルセデスベンツといった企業以上に中小企業によって産業が支えられているという側面があり、世界市場でも投資財の供給者として大きな存在感を示していると言える。

ドイツでは基本的に、大企業のみを優遇するような税制上のシステムが存在せず、「雇用創出の要は中小企業にある」というスタンスから中小企業に対して様々な施策を講じている。特に「資金調達」「積極的な外国への事業展開」「地域における中小企業の業績の伸長」などといった部分を重点的に支援する施策を行っているのが特徴である。

資金調達の面での支援策は?

では具体的に、これらの支援策について見てみることにしよう。ドイツに限らずどの国でも中小企業が苦労する部分のひとつとなっている資金調達の面では、主に「ERP(欧州復興プログラム) 創業者融資」「EXIST プログラム」「ERP 技術革新プログラム」の3つの支援策が柱となっており、これらの施策を利用する側が組み合わせることでより効果的に資金調達をすることができる。

ERP 創業者融資

「ERP 創業者融資」は2つのプログラムから構成されており、「スタート資金」と呼ばれる最高10万ユーロまでの比較的少額の創業資金融資と、「ユニバーサル」と呼ばれる最高1,000万ユーロまでの融資を受けることができる融資が用意されている。本来取引銀行にとって創業者資金の融資は、回収が不能になる可能性も伴ったハイリスクなものであるが、ERPによるこれらの施策は取引銀行のリスクも低減するものになっているのが特徴だ。

EXIST プログラム

「EXIST プログラム」とは、大学や研究機関における起業を促進するプログラムであり、特に大学などに在学している学生が企業を行うことを支援するシステムが有名である。市場に通用するビジネスプランを作成させ、技術革新や全く新しいサービスを市場投入できると判断された学生個人、またはチームに対して奨学金という形で操業助成金が与えられるということがこのシステムの基本構造になっている。

ERP 技術革新プログラム

「ERP 技術革新プログラム」は、前述した学生への起業支援システムの一般企業版のようなものであり、技術革新や新しいサービスを打ち出すことができた企業に対してERPから委託されたドイツ復興金融公庫のグループが融資を行うというものである。

工程は2つに分かれており、研究開発に対する長期的な融資であるプログラムⅠ、市場導入に向けた長期的な融資であるプログラムⅡと段階的に融資を受けることが可能となっている。2つのプログラムを合わせると最高で1件につき750万ユーロもの資金を融資してもらえるのが魅力だ。

このように資金調達の支援策に関して見ても、イノベーションを提供できる製造業に対する支援策が大変充実していることが分かる。技術に関して「違い」を提供できるスキルを持ち合わせている中小企業ならば、これらの資金調達支援策を組み合わせて大きく飛躍することも可能なのだ。

中小企業の国際展開への支援策は?

中小企業の国際展開に関しては、ドイツ政府側が推し進めたものというよりは、むしろドイツの中小企業が自ら推し進めている部分が大きいと言える。ドイツの中小企業は大企業との差別化を図ったり、前述したような技術革新における融資上の優遇策を享受したりするために、専門分野への自社商品の特化を行うことが多い。

専門分野に特化することでその中小企業はオンリーワンの存在になるのだが、それだけでは国内の市場ではパイが小さすぎるために経営を成り立たせることが至難の業である場合が多い。そのため、こういった中小企業は自社の商品を国内だけでなく海外にも積極的に展開することで、国際市場の中でも存在感を示して商品を売っていくことで経営を成り立たせることが多くなっている。

こういった構造がある以上、ドイツ政府としても国際市場に対してドイツの中小企業をアピールして、中小企業の国際展開を適切に支援していく必要が求められる。政府が現在行っている支援策としては、国際市場の動向に関する情報の積極的な提供や、国際見本市の積極的な開催や市場開拓プログラムの策定と運営など、多岐にわたっている。

さらに、近年ドイツ経済において国際的に注目を集めているエネルギー関連の国際市場展開に関しても、中小企業向けに「再生可能エネルギー輸出イニシアティブ」というものを策定することで積極的な支援を行っている。

「再生可能エネルギー輸出イニシアティブ」とは、政府が主体となって国際市場情報の提供やビジネスコンタクトの代行提供を行い、中小企業の国際展開を支援するものである。エネルギー関連事業に関しては特に開発途上国へのビジネスチャンスを積極的に支援している部分が大きく、ドイツの中小企業がそれらの国のインフラ等において第一人者となれるよう積極的に支援を行っている。

地域の中小企業への支援策は?

ドイツは地域振興といった観点から、地域における中小企業への支援策も手厚く行っている。地域経済の活性化にドイツの中小企業が果たす役割は大きく、そのような地域を支える中小企業に対しての政府による支援も手厚いのだ。

地域における中小企業においても、やはりキーワードは「イノベーションを生み出せるか否か」というところにある。陸続きでチェコなどより物価や労働力の価格が安い国々が周囲に存在しているドイツでは、特に地方は王道の産業でそれらの安いモノやサービスに対抗することが極めて難しいと言える。そのため、ドイツは地方レベルでも「違い」を生み出せる中小企業が生き残り、さらに生き残った企業がイノベーションを旗印として地域経済を活性化させる役割を担っているのだ。

そういった地域の中小企業を支えるのが、連邦政府による州政府への権限移譲である。地域の中小企業支援、さらには産業の振興に関しては、連邦政府ではなく州政府が音頭を取って行っているのが現在のドイツの地方振興策であり、地方で半ば自由に産業振興を行わせることで、連邦政府に縛られることなくより効果的な地域振興策を打つことが出来ているのだ。

もちろん、前述したような資金の融資などの面では地域の中小企業も等しく恩恵を受けることが出来るために、地域の中で「違い」を生み出して地域経済の主役になっている中小企業がドイツには多数存在している。そしてそれらの企業によって、人口減少を食い止め、多くの雇用を創出している地方が数多くあるのが、今のドイツの姿なのである。

このように、「資金調達」「積極的な外国への事業展開」「地域における中小企業の業績の伸長」というすべての面において、ドイツの中小企業はイノベーションを通じた「違い」を対価として恩恵を受けられる仕組みが出来ていると言える。これらの恩恵を受けるべく、ドイツの中小企業は「違い」を作り出し、結果的に産業自体が振興していくという良いスパイラルが出来上がっているのが、ドイツにおける中小企業の現状だと言えるだろう。ドイツにおける中小企業ビジネスは「違い」を生み出すことが出来る限り無限大に広がっていくものになっているのだ。

感想・意見をみんなと共有しよう!!

文蔵 一郎 のプロフィール写真
1989年北海道生まれ。北海学園大学法学部卒業後、官公庁に入庁し2年ほど実務を経験する。在職中に一念発起しフリーライターとして独立することを決意。退職後「元公務員ライター」として2016年から独立。大学時代から国際政治を専攻しており、幅広い見地と視野から国内外の政治経済の動向を見定められるよう奮闘している。


関連記事

このページの先頭へ

Social Media Auto Publish Powered By : XYZScripts.com
ツールバーへスキップ