Ausbildung制度は崩壊する?ドイツ職業教育のいま

ドイツには職人文化が根付いていて、その根幹を支えているとも言えるのが職業教育制度、Ausbildung(アウスビルドゥング)です。

かんたんに言えば、専門学校+実務研修を両方こなす制度です。ドイツでは多くの人が、Ausbildungを通して専門知識を学びます。

一見便利なAusbildung制度ですが、それはいま、崩壊の危機に瀕しています。

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Ausbildungという職業教育制度

ドイツは職人文化の国と呼ばれています。日本のように入社してから部署が決まったり、総合職という概念はありません。そのため、正社員として入社する時点である程度の専門知識と実務経験を求められます。その時に必要なのが、Ausbildungの修了証です。

Ausbildungは、ざっくりと言えば専門学校に通いながら働く職業教育制度です。たとえば、月水金は学校、火木土は仕事。1ヵ月間は学校、その次の1ヵ月は仕事、といった具合です。

専門知識を学び実地経験を積む制度なので、「Ausbildung修了しました!」というのは、「即戦力になります!」と同じ意味なのです。

ぶっちゃけ、Ausbildung中の給料はたかが知れています。アルバイトよりも時給が低いこともあります。それでも多くの人が、Ausbildung制度を使います。というのも、Ausbildungを修了していないと、将来の選択肢が大幅に狭まるからです。

Ausbildungの魅力

ドイツの学校教育は、格差と切り捨てによって成り立っていると言えます。

小学校4年生の時点で、ある程度の進路が決まります。大学に進学したいのであれば、小4の時点で進学への舵をとっていなければいけません。以前よりは学校同士の垣根が低くなったものの、いまでも根本的なシステムは変わっていません。

義務教育を終え、大学への入学資格がない人、もしくは進学したくない人は、どうやって就活するか。そのときに必要になるのがAusbildungです。

大学へ行かない場合、学校を卒業したら就職する人が多いのはドイツでも同じです。ですが職人の国ドイツでは、「知識も経験もありません」というのは通用しません。日本のように、ポテンシャルで採用してくれるわけではないのです。

Ausbildungのシステムはさまざまですが、多くの場合2年から3年ほどかかります。その間の給料もスズメの涙。それでもAusbildungをするのは、修了証が就職するのに必要だからです。ドイツでは、「Ausbildungで学び、実務経験をしました」という客観的な実績が必要なのです。

そう考えると、日本の就活でポイントが高いといわれる「サークル長」や「1ヶ月の留学」なんかをアピールするよりも、よっぽど実利的ですね。

大学で高等専門知識を学ばない、学べない人にとって、Ausbildungは社会人への第一歩として大切な制度なのです。

Ausbildungする人が減少

いままでは、「多くの人がAusbildungをして、一握りのエリートが進学する」風潮でした。ですが最近ドイツでは大学に進学する人が増え、それにともないAusbildungをする人も減ってきています。

ドイツの大手新聞、フランクフルター・アルゲマイネ紙では、「Ausbildung制度を採用している企業のうち、1万4000社には1人も応募者があらわれない」と報じています。記事の一部分を意訳しました。

少子化が進み子どもが減っていくなかで、ますます多くの若者が大学への進学を希望している。昨年の7月末、Ausbildungの募集枠は求職者よりも1万3000人分多かった。今年の7月を見ると、求職者よりも募集枠の方が2万4000人分多くなっている。(参考

ドイツは10月に新学期がはじまるので、7月の時点でこの人不足は深刻な状況といえます。

Ausbildungをしている人数の推移http://de.statista.com

2008年には161万人以上がAusbildungをしていたにも関わらず、7年経った2015年では、約133万人まで減少しています。約30万人の減少。募集枠があまるのも当然ですね。これを見ると、フランクフルター・アルゲマイネ紙が報じた「応募者がいない企業」がたくさんあるのもうなずけます。

それにともない、Ausbildungを実施している企業も減少しています。

Ausbildung制度を採用している企業数の推移http://de.statista.com

2007年では約49万の企業がAusbildungをする人を探していたのに比べ、2014年には約43万の企業しかAusbildung制度を利用していません。Ausbildungをする人が減っているのですから、当然の流れですね。

>>次ページ
Ausbildungよりも大学を志す若者たち

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この記事へのコメント 7

  • まいける のプロフィール写真 まいける より:

    日本でも大学進学率がどんどん上がって、工業高校や工専、専門学校が減少している傾向は同じです。ドイツのAusbildungは、年齢に制約がないようなので、今後移民の実業教育などでも活用できるように思えます。
    日本の場合には、まず大学の教育内容を見直す必要がありそうです。特に新設の私学の中にはとにかく学校にある程度行っていれば卒業できるというようなところも多くあります。そんな大学に価値があるのかと疑問に思いますが、それでも高校で落ちこぼれてそれでも大卒の資格が欲しいという需要があるようです。

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  • あい。 のプロフィール写真 あい。 より:

    日本でも、特に切望する職業でもない限り。経済的事情でもない限り。とりあえず、大学って感じですが。
    やはりドイツでも、学歴によって初任給の差が出るのでしょうか?
    だとしたら、教養を深める意味だけでなく、やはり大卒の資格は欲しいですね。

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  • one1color のプロフィール写真 one1color より:

    ベルリンでは、ファッションやデザインのausbildungをやっている人を多く見かけます。ファッションやデザイン業界などのコネがものをいう場所ではausbildungでしっかりとコミュニティに繋がれることは良いかも知れません。

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  • Zenn のプロフィール写真 Zenn より:

    とりあえず大学→卒業できそうにない→Ausbildungという流れでしょうか?それとも「ドイツでは2011年に徴兵制度が廃止」(Wikipedia)が影響しているんでしょうか?日本の制度とはまったく違いますね。しかし「小学校4年生の時点で、ある程度の進路が決まります。」はいくらドイツ人でも早すぎますって。

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  • kimura12548 のプロフィール写真 kimura12548 より:

    世界的に「大卒・院卒」であることが、一定の評価を受ける時代ですからねー

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  • yusuke のプロフィール写真 yusuke より:

    日本の専門学校に近いですね。
    日本も職人が多いので似たようなところが多々ありますね。

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  • Ayano Onozaki のプロフィール写真 Ayano Onozaki より:

    アウスヴィルディングを受ける人減ってるんですね?!今や日本からでも受ける人が増えているので増加傾向かと…みなさんもいつでも受けれますよ!

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雨宮 紫苑 のプロフィール写真
ドイツでジャーナリズムを学んでいます。ライターとして生計を立てるべく、目下奮闘中。ドイツ発のニュースや海外生活情報などをお届けしています。


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