移民の子どもの教育は、ドイツの義務なのか?

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ドイツ人口の20%が移民

昨年はヨーロッパに難民が一気に押し寄せ、一時ヨーロッパはパニック状態でした。ですが移民に悩まされるのは別段新しいことではなく、ドイツにとっては常に悩みの種となっています。

ドイツの2014年の人口を見てみましょう。

移民背景と外国人http://www.bpb.de

ドイツの人口は8089万人。そのうち1638万人、つまり人口の20%ほどが移民背景を持っています。5人に1人が移民背景を持っている、という計算になります。外国人は人口の9%(721万人)、ドイツ国籍の移民が11,3%(917万人)を占めています。

多くの移民を受け入れたことによって、問題も起きています。たとえば、宗教や文化背景のちがいによる摩擦。ですがそれだけではありません。

ドイツ語が話せない子どもたち

移民の流入は、教育にも影を落としました。移民といっても理由や考えはさまざまで、一部の人たちはドイツへやってきても、自国の慣習を守り、同じ国からの移民だけとの狭いコミュニティで生きている人もいます。そして問題は、一部の移民はドイツ語を学ばない、ということです。

多くの移民が求めているのが「豊かな生活」であって、ドイツの生活ではありません。なので、ドイツ語をどれだけ学ぶかは、本人の意思次第となります。ドイツに10年住んでいるのにカタコトのドイツ語しか話せない移民や外国人は少なくないのです。

それは本人が決めたことなので悪いことではありませんが、問題はその人たちの子どもです。両親ともに移民であり、家庭内でずっと現地の言葉を話していたとすれば、子どもはもちろんドイツ語が話せるようにはなりません。ですがその子はドイツで生活している以上、6歳になればドイツの小学校へ入学する義務があります。

いまドイツの初等教育では、「ドイツ語が話せない子ども」が問題となっています。その子らの両親はほとんどの場合が移民で、家庭では両親の母国語を話しています。家庭でドイツ語を学ぶ機会がなく、学校のドイツ語での授業についていけずに落ちこぼれてしまう、ということが起きているのです。

ドイツの教育についていけない移民の子ども

ドイツの教育制度は過酷で、小学4年生である程度の進路が決まってしまいます。小学校を卒業後、基本的には3つの進路に別れます。卒業後就職コースの基幹学校、卒業後職業学校へ行くことが多い実科学校、大学進学ができるギムナジウムです。実際に高校というシステムはありませんが、イメージでたとえれば、高卒、高校→専門学校、高校→大学、となります。

さて、それを踏まえた上で次のグラフを見てみましょう。

国籍・移民背景による進学先の違いhttp://www.frankfurt.de

進学の可能性がとても低く、すぐに就職することが多い基幹学校では、半数以上が外国人。進学の可能性はありつつも大学には進学がむずかしい実科学校では、移民が44%。大学進学が出来るギムナジウムでは、ドイツ人が60%。

端的に要約すれば、外国人は進学がむずかしく、移民は大学進学がむずかしく、ドイツの教育はドイツ人に有利、ということになります。わかりやすい結果ですね。

ですがそれによってドイツが非難されるべきかと言われれば、そうとも言えないと思います。この結果をみれば、「言葉の問題」は見過ごすことができません。まさか外国人の多くが勉強ができない、なんてことはないでしょう。ドイツ在住のわたしは外国人ですし。

「ドイツ語の補講」が必要なドイツの学校

さて、ドイツ語が話せないまま学校に放り込まれた子どもたちはどうなるか。もちろん授業についていけません。そのような事情を持った子どもが少数なら無視するでしょう。でもそれが少数じゃなければ? そうしたら、授業の質を落とすしかありません。それしかなくなるのです。そうなれば何が起こるかというと、子ども全体の学力低下という、国としては由々しき自体へと陥っていきます。

このグラフは、「学校に何を求めるか?」をアンケートでとったものです。

学校に何を求めるか?http://de.statista.com/

注目すべきは、上から3つ目。約半数が、「外国人へドイツ語の補講」を希望しています。ドイツで運営される、ドイツの学校ですよ? それなのに、ドイツ語の補講の必要性が叫ばれているんです。教育現場が、移民の子どもたちの多さに対応しきれていないということですね。

移民の子どもの教育の是非

ドイツ国籍をもっていようがいまいが、子どもは国の、そして世界の財産です。教育は国の使命であり、どんな状況であっても、教育されない環境を認めてはいけません。ですが、他国から来た移民の子どもたちのためにドイツの教育の質を下げるのは、正しい姿勢なのでしょうか。

ドイツは、移民の子どもたちがドイツの教育についていける語学力を得る機会を作るべきであって、学校教育自体をその子たちのレベルに合わせるのはまちがえています。ドイツの公共の教育はドイツ語が理解できる子どもたちに行うべきもので、学校が語学学校の役割を担う必要はありません。

じゃあドイツ語ができない子どもたちは放っておけばいいのかといえばそういうわけではなく、「教育を受ける機会」があることは絶対です。では何が必要か? となれば、「小学校入学前の語学塾」が答えではないでしょうか。

小学校に入ってから「ドイツ語できません」と言われても、先生だって国だって困るでしょう。だったら学校に入れる前にドイツ語を教えるしかありません。子どもにドイツ語を教えることができない親なんだから、しょうがないんです。それがいやなら、ドイツは事前に移民の子どもの教育に対策すべきでした。もう遅いですね。だって学校にドイツ語が話せない子どもがすでにいるわけですから。

すでに入学した子どもたちに対しては、補講しか手がないでしょう。入学させた学校から追い出すわけにはいきませんから。

いずれにせよ、ドイツの教育の質を下げないためには、ドイツ語の補講をするしかないでしょう。

この記事へのコメント 2

  • @umwerlin より:

    結論のドイツ語の補講は多少論理の飛躍がある気がしますが、統計データは面白い。そもそも幼稚園なんかでドイツ語学ぶ機会は一応あるし。補講をしても通わせない移民親が多いんじゃないですかね?

    3
  • Zenn のプロフィール写真 Zenn より:

    「ドイツ語の補講」もやむを得ないかもしれませんが、「セサミストリート」のようなドイツ語の子供向け番組があればよいのでは?もしくは日本のアニメをドイツ語吹き替えで大量に流すとか。移民の子供たちはドイツ人になるのだから、自国の言葉がしゃべれないのはやはりまずいでしょうね。

    0

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雨宮 紫苑 のプロフィール写真
ドイツでジャーナリズムを学んでいます。ライターとして生計を立てるべく、目下奮闘中。ドイツ発のニュースや海外生活情報などをお届けしています。


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