ドイツから学ぶEV(電気自動車)開発の変遷と最新状況【2016年】

2016年は将来、ドイツのEV(電気自動車)にとって大きな節目となった年だと振り返られるかもしれません。4月、ドイツ連邦政府はEV推進に向け、ダイムラー、BMW、フォルクスワーゲンの3社と合意を結び、10億ユーロ規模の補助金導入を決定したのです。

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ドイツ政府が推進するEV普及

この補助金の具体的な使途は、購入者に対する補助金と、充電設備などのインフラ普及のために充てられます。今後、EVの購入者に対して4,000ユーロ、またPHV(プラグインハイブリッドカー、外部充電が可能でEVとしても走れるハイブリッドカー)に対して3,000ユーロの購入補助金として支給されます。この補助金は60,000ユーロ以下の自動車に限られますが、割高だったEV、PHVの購入のハードルを下げてくれることが期待されます。またインフラ整備には、全体の30%の3億ユーロが使われます。これも、EVやPHVの購入に対しての心理的なハードルを下げてくれることでしょう。

このような取り組みの背景としては、ドイツではEVやPHVの普及が進んでいないことがあります。ロイター報道によればドイツで登録されている自動車は約4500万台に達しますが、EV、PHV、そして従来型のHV(ハイブリッドカー)は僅か5万台に留まります。何故、ドイツで電気仕掛けの自動車が普及してこなかったのか、そして何故、官民が一体となった普及の推進を行うのかを、解説します。

市街地に強く長距離に弱いEVと、ドイツの道路事情

EVは、ご存知のとおり電力を用いて電動機(モーター)の力で走る自動車です。しかし、内燃機関(エンジン)と比べると、その特性は相当に異なります。

内燃機関(エンジン)の特性

化石燃料を燃焼させるエンジンは、ある程度回転数を上げた状態で、もっとも高い性能を発揮することができます。また、一定の回転数を保つことにより、その効率は上昇します。その回転数から大きく外れた低回転では効率は著しく悪化し、その回転数を上回る高回転では、やはり効率が悪化し、出力も頭打ちになります。

そのため、エンジンの効率の良い回転数をできる限り使えるように、エンジンを持つ自動車は変速機を搭載し、ギア比を適宜変更することで、あらゆる車速で十分な性能を発揮するように工夫されています。エンジンを持つ既存の自動車は、ある程度高速域での走行に向いた構成だと言えます。

またガソリンや軽油の給油には、それほど長い時間がかからないというメリットがあり、燃料を補給しながら長距離を移動するのにも適します。

電動機(モーター)の特性

他方、モーターは回転を開始した時点でもっとも高い性能を発揮することができます。その後回転数が上がるにつれて、効率の面では低下していきます。余計な運動エネルギーの変動を起こさないという点では、やはり一定の回転数を保つことが理想的ではありますが、エンジンに比べると、頻繁な回転数の変化による効率低下は少なく、減速のときに生まれる電力を回生して蓄え直すこともできます。

充電にかかる時間は急速充電などを用いても長く、出先での補給は不利です。基本的には市街地走行や短距離移動に向いた構成です。

ドイツの道路事情にフィットするのは?

ガソリン車とEVの比較

さて、ドイツの道路事情に目を向ければ、高速道路網としてアウトバーンが整備され、200km/hを超えるような速度域での移動にも対応しています。アウトバーン以外でも、郊外にひとたび出れば、十分な速度を出せる道路事情が整っています。

他方、市街地では公共交通が発展していて、自動車への依存度は、途上国などと比べるとそれほど高くはありません。総じて、ドイツの道路事情とEVの親和性は低く、EVの普及率が低いことにも納得できます。とはいえ、ドイツの自動車の歴史の中で、EVが全く無視されてきたわけではありません。

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自動車の黎明期を支えたポルシェのEV開発での試みとは?

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この記事へのコメント 7

  • まいける のプロフィール写真 まいける より:

    PHEVというメカニズムはエンジン車とEVの機構を両方全て備えてただバッテリー容量が少ないだけという非効率なメカニズムです。FCVはEVに燃料電池の機構を組み込んでバッテリー容量を小さくしたメカニズムでやはりEVに比べれば非効率なシステムです。さらにFCVはZEVの仲間ですが、その燃料の水素は天然ガスからつくるわけで、燃料サイクル全体から言えば化石燃料で動いているといえます。EVは変速機が不要というのが最大のメリットで最終的にはインホイールモーターの形式になるでしょう。問題は航続距離と充電時間ですが、もし自動車メーカーが本気でEVを普及させたいなら、協力してバッテリーを標準化することで、バッテリーを車の付属品としてではなくエネルギーの媒体として扱い、ガソリンスタンドで充電済みバッテリーに交換する作業で充電時間をガソリンなみに短縮することが可能になり、インフラ整備も不要になります。早く世界の自動車メーカーが本気になってバッテリーの標準化に取り組むことを願うばかりです。

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  • Zenn のプロフィール写真 Zenn より:

    「電気仕掛けの自動車」という表現がいいですね。EVの歴史から書かれていて(なんとポルシェ博士が出てくる)読み物としても面白いです。「レンジエクステンダーEV」というのは初めて知りましたが、現在のハイブリッド車の概念をひっくり返したようなものですね。私も電気系なので興味深いです。

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  • kisetu-ju のプロフィール写真 kisetu-ju より:

    確かに自動車が世の中に存在し便利になった分、長年かけて環境汚染を起こしたわけです。確かに電気自動車がエコにつながっているが、購入や経費が掛かりすぎている。MIRAIという新しい水素自動車も登場しているが、今後どれほど一般に使われるようになるのでしょうか?とても高価な車としか考えられません。一般化されるまでにはなかなか難しいことだと思います。

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  • jpeg2016 のプロフィール写真 deutchland より:

    道路ネットワークがヨーロッパ中とつながっているので、車での移動が便利なのではないでしょうか。充電設備も充実しており、バッテリー切れの心配もないのでしょう。ヨーロッパの中央に位置し、自動車製造大国のドイツがけん引役としていくのは、当然の結果のような気がします。

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  • 直人 東條 のプロフィール写真 直人 より:

    電気自動車がこのまま流行すれば、地球温暖化はなくなるんじゃないかと思う。ガソリンを使った自動車は二酸化炭素を出すので、それで地球温暖化につながるので、電気自動車は問題の解決になると思う。

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  • あおい のプロフィール写真 あおい より:

    車が電気で走るようになる現実は本当に来るのかわ想像もつかなったけど、最近になってIT社会の発展により余計なところはすべてが機械に任せられるレベルにまで。平和な社会になるように少しずつ進歩してほしいです。

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  • miz のプロフィール写真 miz より:

    電気自動車を購入すると補助金がもらえるんですね。
    電気自動車の普及に貢献することと思います。
    いま、出回っている電気自動車が、どのくらいの値段で購入できるのかにも興味があります。

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Kotaro Harakawa のプロフィール写真
writer, medical doctor, JAPAN MENSA member


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