脱EUでもEU市場には残りたい。イギリスの手本はノルウェー?スイス?
EU離脱後も域内市場には残りたい本音
世界に激震をもたらした、イギリスの国民投票。僅差ではあったものの、これでイギリスはEU離脱への舵を切るでしょう。もともとユーロを使わず、EU参加とはいっても、シェンゲン協定には加盟していなかったイギリス。
独自の立場を貫いてきたイギリスですから、EU脱退という知らせも、「イギリスなら仕方ないかな」と考える人も多いでしょう。もともと大陸と距離をとっていましたからね。
実際、ポンドを使ってシェンゲン協定にも入っていないイギリスがEUから離脱したところで、「イギリスに何が起こるの?」と思う方もいらっしゃるでしょう。
イギリスがEUを離脱したとして、一番大きな問題はその経済の動きです。ひとつの国民投票の結果で、ポンドやユーロ、円ですら影響されましたから、これからの動きは気になるところです。
イギリスがEUから離脱すると、イギリス経済はどうなるんでしょうか。かんたんに言えば、EUの市場に参入できなくなるんです。EU参加国ではなくなりますから、当然ですね。
つまり、関税の撤廃やヒト・モノの移動に関して、対策しなくてはいけません。イギリスは、どうすべきなんでしょうか。
イギリスが持つ2つの選択肢
いくら誇り高きイギリスとは言っても、EUの市場は巨大です。無視はできません。ということは、「EUは離脱したいけど、域内市場には残りたい」という思いがあるのは当然のこと。いままで受けていたEU経済の恩恵を捨て置くとは思えませんしね。ですが、そんなことは可能なのでしょうか。
EUに参加せず、自国の通貨を維持しつつ欧州経済領域に参入している国として、例が2つあります。ノルウェーとスイスです。ノルウェーはノルウェー・クローネを、スイスはスイスフランを通貨としています。
この2つの国はEUには参加していないものの、EUの経済には参加しています。関税はかからないし、域内のサービスやヒトの移動なども認められています。
「それっておいしいとこどりじゃん!」と思うかもしれませんが、そうとも言えません。
ノルウェーとスイスは、それぞれちがうかたちで欧州経済に参加しているんですが、その方法にはメリットもあればデメリットもあります。
イギリスがEUを離脱したとしても、EU経済の力は大きいですから、ノルウェーやスイスと同じようにEUは非参加、でも欧州経済へは参入する、という立場を目指すのではないかとみられています。
その場合、ノルウェーとスイス、どちらの方式を参考にすることができるのでしょうか。
EU非参加国でも経済領域の仲間、ノルウェー
ノルウェーはEUに加盟していませんが、アイスランドやリヒテンシュタインと同じように、EEA、つまり欧州経済領域には入っています。この欧州経済領域にはイギリスも加盟していて、基本的には商品、ヒト、サービス、資本などは制限なく域内で動かすことができます。

青はEUと欧州経済領域に両方加盟している国です。緑の部分、ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタインは非参加国ですが、欧州経済領域には入っています。
後述しますが、真ん中にぽっかり空いている色がついていない国はスイスです。
ノルウェーはEUに、年間約3億8万8千ユーロ(1ユーロ112円換算で約435億円)を支払うことによって、ヨーロッパ経済区域の仲間入りをしています。お金を払うことによって、EU市場への参入の権利を買っているということですね。
「イギリスはEU抜けても経済領域には入ってるんでしょ? だったらそれでいいじゃん!」と思うわけですが、そうもいきません。
いままではイギリスはEU参加国だったので、EUの市場に参入することへのハードルはありませんでした。ですが離脱となれば話は別です。イギリスが同じように経済区域に参入するとして、ノルウェーと同じ計算方式でいくと、年間約40億ユーロをEUに支払うことになるそうです。(約4兆5千億円)
それはあまりに巨額で、ノルウェーと同じようなかたちでEU経済と関係を結ぶのは、事実上不可能に近いとみられています。4兆5億円は出せないよな……。
独自の立ち位置を協定で確立したスイス
スイスでは、1992年の国民投票の結果により、欧州経済領域への参加を見送りました。ですがEU市場には参加したい。ということで、スイスはEUと個別に協定を結ぶことにしました。
スイスはEUにも欧州経済領域にも参加していないものの、EUとのあいだに協定を結び、それによって自由貿易を可能にしました。1991年に第一次協定が結ばれ、2004年にさらに第二次協定によって権利を拡大しました。
その協定によって、スイスとEU間の人の移動の自由、陸路や空路での輸送なども認められています。経済協力だけでなく、国境を越えた難民対策や環境保護などに対しても協力することが定められています。
こうして考えると、「ノルウェーみたいにお金を払うのがムリなら、イギリスもスイスみたいに、個別で協定を結べばいーじゃん!」と思うのですが、このやり方も、おいしいことばかりではありません。
EUと取引するときは、EUの決まりに従う必要があります。ですがEU非参加国は、EUの決まりに口をはさめません。つまり、EUが決めたことに異を唱える権利がないんですね。自分なしで決められたルールを守ることが前提となります。
大陸と一線を画してきたイギリスが、EUのルールにおとなしく従うのか……。なんだか、うまくいかない気がします。
その上スイスのようなやり方を選ぶとしたら、それぞれの分野で個別の協定を結び、それにしたがってEU経済領域参加のお金を払うわけですから、かなりややこしくなります。
スイスは時間をかけて段階を踏んでいまの立場を確立しました。すでに混乱しているイギリスが、うまくEUとの関係を築けるのでしょうか。
ほかのEU参加国の感情としても、「EUは抜けるけど、EUと協定結んで経済的恩恵だけは受けるよ!」という言い分は、なかなか受け入れがたいと思います。
ドイツ人の反応
この記事に対しての、ドイツ人(ドイツ語)のコメントを一部抜粋します。EU会議では、「早く離脱しろ」「おいしいとこどりは許さない」なんて紛糾していますが、この記事を読んだドイツ人はどう思っているのでしょうか。
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イギリスだけではなく、EUが見落としている、EU内の改革の遅れがあるんじゃないか
スイスのやり方では、とてつもなく面倒だし退屈だ。ノルウェーのやり方はいいけど、移民問題は解決しないよね。
イギリスでは、EU全体ではなく、EU内で個別に協定を結びたいらしいよ。でもそれってほとんどムリだと思う。
スイス方式はすっごく複雑で、だれもやりたがらないんじゃないかな。ノルウェーのやり方はいいけど、東欧から仕事を求めてやってくる人たちとの対立は続くね。トルコと協議してるみたいに、特別処置って可能性もある。
などと書かれていました。スイスのやり方では煩雑が指摘され、ノルウェーのやり方では移民制限をかけられないことについて言及されていました。
イギリスはどうやってEU経済領域に参加すべきか
こうしてみると、イギリスのEU脱退という選択肢は、イギリス経済に大きな混乱をもたらすことがわかります。ですが、EU市場を捨てることはしないでしょう。いまやEU市場は無視できない規模ですからね。
じゃあEU非参加国として、どうやってEU経済に参入するか。イギリスとしても頭の痛い問題であるといえます。
ノルウェーのやり方ではお金がかかりすぎて現実的ではないし、スイスのやり方は複雑で面倒。経済の立て直しが迫られるイギリスが、悠長に細かな協定を結ぶ時間があるのかは疑問です。
もともとイギリスは欧州統合と距離を取っていましたから、EUとうまく関係を修復できるかに、これからのイギリスの命運がかかってると言えるでしょう。
これからのイギリス経済が、どうやってEU経済に接するのか。イギリスだけでなく、EU経済、ひいては世界の経済に影響を及ぼす、大切な決断です。イギリスの動きはこれからも世界に注目されるでしょう。
参考URL:Frankfurter Allgemeine
イギリスが、どんな選択肢を取ったとしても、EUにはプラスの影響はないんだろうね。国民投票でBrexitが決まった時点での、EU崩壊への詰み将棋。
イギリスの経済的成功⇒他国の追随⇒EUの崩壊
イギリスの経済的失敗⇒イギリスの弱体化⇒EUへの負の影響⇒EUの崩壊
もし、時間を戻せるのなら。イギリスは、もう一度しっかり良く考えて国民投票して欲しいかも。一見、残留が損に思えても。長期的に考えたら、プラス、マイナスしたらどーだろう。日本には、「損して得取れ」という諺があるけど。イギリスには?
BREXITの翌日にイギリスでネット検索されたのが「What is EU ?」。民主主義なのか、衆愚なのか、これからの展開を見守りたい。FXをやってる身にすると変化があるのは歓迎したいものです。
イギリスの本音は、EC(EUの前身)かと思います。西側と東側の経済格差は依然大きいし、旧ECメンバーで市場を再統合しなおしたいのではないでしょうか。