ドイツで増え続けるホームオフィスという働き方 

このテーマは、ドイツ企業の間で度々議論の的となってきた。自宅で作業をしたい労働者と、それに反対する上司の間で意見が異なることが、最大の問題である。ところが最近発表された、ドイツ連邦労働省による代表調査によると、ホームオフィスにこそ、両者が納得し、いわゆるWin-Winの関係を築くチャンスがあるという。

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在宅勤務制度の有無で、社員の心理も変わる

在宅勤務が可能であれば、働き手の満足度が上がる。しかし、実際にその機会を提供しているドイツ企業は全体のわずか3分の1にすぎない。この数値は2年前から変化していない。パソコンやスマートフォン、タブレット端末によって、在宅勤務が技術的には益々容易になっているにも関わらず、である。

その理由の一つは、ドイツの企業文化に根付く考え方にある。社員がどんな仕事をするかよりも、見えるところで仕事をすることを重視する。社員を信頼して仕事を任せるより、できるだけ包括的に管理しようとする。悲しいことに、こういった精神がドイツ企業に根付いているのだ。

業務を部分的にでも自宅で行うことが認められる企業の社員は、そうでない会社の社員と比べて自社への愛着が強く、上司を公平だと感じており、自らの仕事への満足度も高い。会社内でのみ仕事をするという人のうち40%が、より自由な働き方を求めている。この望みが満たされないことが仕事への意欲を奪い、社員は融通の効かない上司や仕事に不満を抱えることになる。

自宅作業が特に浸透しているのは、500人以上の従業員を抱える企業においてである。これらの企業のうち、分野に関わらずおよそ半数が自宅作業を認めている。ただし、自宅にいては成り立たない仕事もある。自動車工場で働いているとしたら、社員は自宅で車をつくることはできない。スーパーマーケットの店員は、レジに座っていなければならない。

在宅勤務の長所・短所

働く側にとって、在宅勤務の利点は明らかである。通勤時間を節約でき、仕事とプライベートをうまく調和させることができる。実際、自宅で行う方が効率のよい作業も少なくない、と主張する声もある。ただし、もちろん在宅勤務にも問題点がある。上司や同僚とのコンタクトが取りにくくなる、仕事とプライベートの境が曖昧になってしまう、などである。

また、自宅を仕事場とする人たちはそうでない人と比べて長時間働いている、という事実もある。超過労働も日常茶飯事である。在宅勤務となると、仕事と余暇、その他の時間の区別が難しくなるようだ。仕事以外の時間にも仕事関係の電話を受け、急ぎのメールには返信を書く、という人が少なくない。プライベート時には仕事関係のコンタクトを断つ、という人の割合は2013年の40%から35%へと減少した。

在宅勤務に反対する人の根拠となっているのは、既に述べたようにその場にいることの大切さのようだ。会社側は、社員が会社に通うことを重視する。また、自宅には仕事に必要な設備や道具がないため効率が下がる、という声もある。

在宅勤務への反対意見に関して、連邦労働省のアンドレア・ナーレス氏があるインタビューで不満を明らかにした。「社員が会社に出てくることを要求する企業が多すぎる。仕事の大半は、技術的に見ても自宅で行うことができるもので、それを働く側も望んでいる。これからは自宅仕事の割合を増やしていくべきだと思う。時間だけでなく、場所に関してもより自由があって然るべきである。」

アンドレア氏がその先駆けとして挙げた企業が、BOSCHだ。この会社の社員は、午後には職場を離れ、子どもの世話をすることが認められている。その際に遅れた分の仕事は、夜に自宅で行うことで埋め合わせる。

BOSCH社は、在宅勤務の権利を会社規約の中でも明記している。これによると、十分な根拠がない限り、上司は社員の希望を拒否することはできない。この取り組みでBOSCHが目指しているのは、社員の創造性とアイデアを助長し、今後働き手となる若い世代にとって魅力的な企業になることだという。

在宅勤務はデジタル化の恩恵

在宅勤務という比較的新しい働き方によって、勤務場所だけでなく、働く時間もより自由なものになってよいと思う。平日にプライベートの大事な約束を入れたとしても、その分の仕事は次の休日に取り返せばよいのではないだろうか?在宅勤務は、急速に発展しているデジタル化の恩恵である。古くからの型にはまった考え方で、「会社に行かずに働くなんてありえない。」と退けてしまうにはあまりにもったいないのではないだろうか。

在宅勤務により、企業と社員の間にWin-Winの関係が生まれる。社員の生活の質が向上することで、仕事の効率も高まる。社員が会社に愛着を持ち、良い仕事をしてくれるのは、まさに企業の望むところである。技術の進歩がもたらしてくれる、場所的にも時間的にも自由に働く可能性を、あらゆる人が活用できる道を模索していく時代に入っている。

参考記事:
Wenn Präsenz wichtiger ist als Performance
Der sinnlose Widerstand der Firmen gegen Homeoffice

この記事へのコメント 1

  • かすたーど のプロフィール写真 かすたーど より:

    子育てをする人にとっては、このような働き方はメリットが多いかもしれませんね。

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tomo のプロフィール写真
1992年高知県生まれ。愛知県立大学外国語学部を卒業し、専攻したドイツ語を生かしたいと思い到り、渡独。 現在ドイツのフランクフルトに在住、スポーツ関係のベンチャー企業でのインターンシップに参加している。翻訳者として一語一語丁寧に、ライターとして読者に新たな気づきを与えることを心がけ、執筆活動に取り組む。


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