ドイツの工作機械産業~モノづくり大国ドイツの工作機械~
産業革命で大きく進化
ドイツの基幹産業の一つとされているのが、工作機械産業です。2004年のデータになりますが、ドイツの世界における工作機械のシェアは19.3%となり、世界で最も大きな市場占有率を誇ります。
ドイツで工作機械産業が盛んになったきっかけは、17~18世紀にヨーロッパを席巻した産業革命だと言われています。産業革命直後は、工作機械を製造するためには、長いキャリアを持った修練工の存在が必要でした。ドイツはもともとこのような職人が生まれやすい土壌があったため、ヨーロッパを代表する工作機械生産国になりました。
18~19世紀ごろは産業革命の影響もあって、ヨーロッパは絶対的な存在でした。しかし世界各国も技術革新によって、どんどん進化していて、そこまでの絶対的優位性はなくなっています。しかしその中でもドイツの伝統や高い技術力に裏打ちされたブランド力は、今なお世界に対して大きな影響力を持っています。日本も工作機械の世界ではかなりの大国です。その日本のライバル的存在として、ドイツがいます。
ドイツを代表する工作機器メーカー
シュッテはケルンに本拠を置く工作機器メーカーで、多軸自動板や5軸CNC研削盤などの製造を手掛けています。販売パートナーや子会社は全大陸に存在していて、グローバルに手広く事業を展開しています。1880年に商社として設立されたことがルーツで、130年以上の歴史を誇ります。40万点以上のスペア部品を取り扱っているメーカーで、何十年も前の部品も用意していますから、何か不具合が起きたとしても修理を依頼して、長く使用し続けることも可能です。
ハームレもドイツでは有名な工作機械メーカーです。特に5軸マシニングセンタの製造で有名です。5軸加工は、チャッチング1回で多面加工が可能な所が特色です。その都度ワークのクランプを外さずに作業ができるため、心出しやクランプにおける誤差を最小限にでき、正確性を高められます。また工具の向きに関しても自由度が高いため、ワークにより接近して作業ができ、精密な加工も可能になります。
トルンプもドイツの工作機械メーカーとしては有名な企業になります。ちなみに1977年には横浜にトルンプの日本法人もドイツトルンプ社の100%出資で設立されています。レーザー発振器の製造で有名な企業で、精密に物を切断する機械などの製造・販売を手掛けています。このように多方面にわたって、ドイツだけでなく世界を代表するような老舗のメーカーがいくつもドイツ国内にはあります。
国内も輸出も好調
ドイツの工作機器メーカーの最近の推移を見てみると、好調さを持続しています。例えば2012年には、継続した受注が発生したこともあって、設備の使用率は100%に到達したとされます。結果的には前年度比9%の成長となって、141億ユーロの売り上げを記録しています。国内の需要も高かったのですが、それを上回る輸出需要もドイツの工作機器産業が堅調な要因の一つとなっています。
ドイツの工作機械の輸出額ですが同じく2012年で、95億ユーロと見込まれています。これは前年度比で20%のアップとされていて、記録が残っている中では最も大きな成長率になっています。輸出が好調な要因として、中国からの受注量が増えたことが関係しているようです。売り上げは実に24億ユーロを記録し、前年度と比較して14%のアップになりました。中国は世界の中でも代表的な経済成長国で、その高い需要がドイツの工作機械産業を押し上げる要因になったと言えます。
世界中で評価されるドイツの工作機械
ドイツの工作機械産業ですが、今後も成長の可能性は十分期待できます。というのも世界中で、ドイツの工作機械に対する評価が高いためです。例えば輸出について見てみると、中国が突出しています。次に輸出の多い国として、アメリカがあり、アメリカで生産ラインを刷新するときには、ドイツの工業機械を導入が好まれる傾向があります。その他の国々でも、特に欧米諸国では工作機械はドイツから輸入するパターンが定着した感があります。
ちなみに工作機械の分野では、長らく日本が世界トップの生産量を誇りました。しかし2009年になって、中国に1位の座を譲渡しました。しかも2位にとどまることもできず、ドイツに2位の座を明け渡して、一気に3番手にまでダウンしてしまいました。これはリーマンショックの影響と言われています。日本は前年度比で56.5%減と大幅に生産量を下げています。しかしドイツを見てみると、35.2%減に踏みとどまることに成功しています。
当時円高・ユーロ安の展開だったことも関係していますが、ドイツブランドの世界における信頼性の高さがこのような結果を生み出したとも言えます。日本の工作メーカーの関係者の中には、「どんなに工夫をしてもドイツの精度は出せない」という意見を持つ人は多いようです。このような点を見ても、工作機械業界におけるドイツの優位性はしばらく続くと見られています。
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