ドイツメディアが報じる「次のEU離脱国」はどこ?
平和という名の希望を持って、統合を進めたヨーロッパ。言葉も文化もちがう国々が、本当に手をとりあうことができるのか――。日増しに高まる反EUの機運のなか、イギリスの国民投票では、僅差ながらも離脱派が残留派を抑えました。
イギリスでは、EUへの懐疑や反発が、国民投票という手段で公となりました。EU内では、「ドミノ式に離脱が続くのではないか」「自分の国も意志を示すべきではないのか」と混乱に陥っています。
反EUが進むヨーロッパ
大手ドイツメディアであるディ・ヴェルト紙では、イギリスの国民投票が他国にどのような影響を与えるかを解説しています。(参考:Die Welt)
EU参加国としては、離脱の意思を示したイギリスはともかく、それに釣られてほかの国がどんどん離脱していくのは非常にまずい。イギリス離脱のニュースがヨーロッパを駆け巡り、いま注目されているのは、「ほかの国はどういうリアクションをとるのか」です。
記事内では、離脱へと舵を切る可能性が高い7つの国を挙げています。
色が薄い国は「EUに残留する」であろう国です。色が濃くなるにつれて、EU離脱の可能性が高い国となります。
記事中では、チェコ→フランス→ハンガリー→オランダ、デンマーク、ポーランド→オーストリアの順に、EU離脱の可能性が高いと述べられています。
EUに最も懐疑的なのはチェコ
記事中にあげられた7つの国のなかで、一番EUへの反発している国はチェコだと報じられています。離脱の可能性を10段階に分けると、チェコは9(可能性が非常に高い)に分類されています。
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57%のチェコ人が、EUに所属することにリスクがあると答え、37%のみが恩恵を受けていると答えた。
移民の受け入れについて、「EUに任せるべきだ」と答えたのはわずか22%。(イタリア75%、ドイツ68%)
EU離脱の賛否を問う国民投票を働きかける動きもさかんになってきている。
チェコというと、日本人にはあまりなじみのない小国で、重要視はされていません。ですがチェコの世論を見てみると、明らかに反EUに傾いています。
EUとしては、さらなる離脱国が出るのはさまざまな面で損失を被る事になります。また、チェコはドイツ、ポーランド、スロバキア、オーストリアに国境を接する中央ヨーロッパに位置しています。
大陸と一線を画しているイギリスとはちがい、チェコが離脱へ向けて動くとなると、周辺国への直接の影響が懸念されます。
根強いEUへの不信感を持つフランス
フランスはもともとフランス人としての誇りが強い土地柄で、難民政策などでドイツと衝突していました。ドイツと並ぶEUの大国ですから、フランスの動向は非常に気になるところです。離脱への危惧はレベル8です。
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61%のフランス人が、「EUにネガティブな考えを持っている」と答えた。
53%のフランス人が、EU残留について国民投票すべきと答えた。
EU離脱によって政治的、経済的に発展すると考える人がますます増えている。
フランスのように、ある程度国力と国土を持っている国からすれば、「EUに参加することで足を引っ張られる。自由にできないのはうんざり」というところでしょう。ユーロ危機と難民パニックになったときも、「フランスはフランスだ」という姿勢が見て取れたので、しょうがない流れなのかもしれません。
ですがフランスが国民投票を行い、離脱派が過半数を超えてしまったら、いよいよEUは解体の道へ歩むことになるでしょう。他国がそれを許すとは思えないので、フランスの動きはこれからも注目されるでしょう。
ジレンマに揺れるハンガリー
チェコ、フランスと続いて、離脱の可能性のレベルが7とされているのがハンガリーです。難民たちに「ドイツへの通り道」とされ、昨年はEU域外であるセルビアとの国境を封鎖しました。
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首相は移民受け入れの割合について国民投票する見通しを立てている。
移民政策の責はメルケル首相が負っているという論調。
強いヨーロッパの中に所属していたいという思惑がある。
ハンガリーにとってEUに参加しているということは、経済的にも外交的にも圧倒的に有利です。EUの恩恵にはあずかりたい。でも難民を押し付けられるのはごめんだ、という考えがあるのでしょう。ドイツを目指す難民たちによって混乱に陥った経験からか、難民政策に対してはやや強行路線。
難民対策によってEUとの溝が浮き彫りになりはしたものの、EUの一員でありたい、という気持ちは変わっていないようです。あとはその溝をどう埋めていくかですね。
EUを否定し続けたデンマーク
デンマークもEU離脱の可能性があるとみられています。レベルは6。デンマークはEUに参加しつつも、ユーロは導入しておらず、独自の立ち位置を守ってきました。
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デンマークは国民主権の崩壊を恐れている。
マーストリヒト条約、ユーロ導入は否決、拒否している。
世論では、過半数以上が残留を望んでいる。
いままで、欧州連合の設立を定めた1992年のマーストリヒト条約を、反対50,7%で否決。2000年の国民投票では、53,1%の反対でユーロ導入を拒否した歴史があります。
現在の世論の様子では過半数以上が残留を望んでいるようですが、独自の通貨を守っているぶん、離脱へ向けて動き出したら早いのかもしれません。
大国に翻弄されたポーランド
EUの中でも広い国土を持つポーランド。離脱の可能性レベルは6です。ドイツと国境を接し、ベラルーシやウクライナを挟んでロシアにも近い位置にあり、歴史上大国に何度も分割されました。
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ポーランドはイギリスと結びつきが強かったため、イギリスのEU離脱は悪い知らせ。
外務大臣は「わたしたちはEUに残りたい。唯一の問題は、どうやって残るかだ」と述べた。
84,5%がEU残留を支持し、ポーランドの経済発展はEUに大きく影響されると考えている。
強大な隣国に振り回され続けた歴史があるからか、出来る限りEUという後ろ盾を失いたくないのではないでしょうか。多くの人が残留を望んではいますが、EUとロシアの論争では、EUはポーランドを「法治国家の原則を犯している」と非難しました。
ロシアとヨーロッパとい協力な地域の間にあるポーランドは、EU参加による経済発展を遂げつつも、ロシアの影響下から完全に離れているわけではない、という微妙な立ち位置です。
オランダは懐疑的だが様子見
デンマーク、ポーランドと並んで、オランダの離脱の可能性はレベル6。失業率などを見ても、オランダ経済は比較的落ち着いています。ですがイギリスの国民投票の結果を受け、同じように国民投票を求める署名運動が活発になっています。
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世論はイギリスと同じように、EUに懐疑的。
世論と反対に、多数の政治家はEUを支持している。
イギリスに追随するとしても、2017年の国会議員選挙のあとになるだろう。
国民は、国民投票でEUについて賛否を問いたい。政治家はEUを支持している。この状況で、来年は選挙とのこと。その選挙の結果次第では、オランダも大きく反EUの道を進むこともありえます。ですが記事内では、選挙までは大きな動きはないのでは、と予想されています。
もし国民投票が行われ、イギリスと同じ結果が出たら……。来年の選挙に、EU参加国オランダとしての真価が問われることになりそうです。
極右政党が台頭したオーストリア
ドイツとの複雑な関係を保ちつつ、早い段階でEUに加盟したオーストリア。離脱の可能性はレベル5。2013年以降、選挙の度にひと波乱起きています。
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極右政党であるEPÖは、イギリスの国民投票の結果を、「主権の回復を勝ち取った」と祝福。
EPÖは先日の大統領選挙で、僅差で敗北している。
経済的に強固な結びつきを考えると、オーストリアがEUを脱退するとは考えづらい。
2013年の選挙では、社会党および国民党が過去最低の得票率を記録。2015年、移民や難民に寛容だったファイマン首相が難民受け入れの条件を厳格化。結果、政府公認の候補者がだれも決選投票に進めませんでした。
5月に行われた大統領選挙では、戦後のオーストリアを引っ張ってきた社会党と国民党不在の初選挙となりました。
「いますぐ」ということではなくても、徐々に力を伸ばしている極右政党のことを考えると、これからさらに支持者を集めていくかもしれません。
EUはドミノ倒しとなるのか
イギリスの国民投票の結果は、世界に大きな影響をもたらしました。なかでもEU参加国にとっては、自らの国の行く末を案ずるのに十分な衝撃をもたらしました。
多くの犠牲の上に成り立っているEU。イギリスが本格的に離脱へ舵をきれば、それに続く国が出てもおかしくありません。そうすれば、ドミノのようにEUが破たんしていきます。
これからは、EU全体ももちろんですが、EU参加国それぞれの動きに注目する必要が出てきます。
EU離脱懸念国のほぼすべてがドイツの隣国。
ドイツがEUの恩恵を受けているの隣で見ていて、搾取されていると感じているのだろうか。
日本もそうだが、隣国同士は仲が悪い。
チェコが一番怪しいっていうのが意外でした。
失礼ですが、そこまで経済力が強くないイメージなので、1ヶ国抜けたところで集団イジメにあって、立ち直れなくなるのではないかと思います。
確かに、フランスのような大国ならいざ知らず。経済大国でない国は、EUにしがみついた方が保護という恩恵を得られる分、得することが出来る気もしますが。
離脱か!とあれだけ大騒ぎしておいて結局留まっているギリシャという国もあります。文化も経済の強さも何も異なる国々に、共通の制度をもたらすのはなかなか難しいことだと思います。
イギリスは大英帝国のときから衰退したとはいえ、今でも先進国だからイギリスのeu離脱はeu加盟国だけにならず世界に影響を与えるだろう。
アヘン戦争の時でも戦争をするかしないかで僅差だったか、eu離脱も僅差だった。歴史は繰り返されるというけれど本当にそうだと思う。
そうしたらこの出来事は歴史におおきな影響を与えることになろう。
ベルギーはとりあえずないっすね
この記事読むだけでEUの継続に懐疑的になってしまいます。
ヨーロッパとして統合してきたのですから、うまくいけばいいのに。ドミノ式に崩れていくのは止めたいものですね。