ドイツでもテロは起こるか?フランスとの移民の”質”の違いによるテロリスクとの相関性

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しかし、ドイツとフランスの移民大国の性質は異なる

それは両国の歴史に多くの理由がある。フランスは第二次世界大戦(以下WW2)前から植民地支配範囲を広げ、その支配国は北アフリカを中心に中東のシリア(これは注目だ)までも植民地化していた。対するドイツの植民地はほとんどなかった。そしてWW2終了後にフランスの植民地は独立して行くのだが、ここでフランスは独立阻止戦争の泥沼に入り込んでいった。特にアルジェリアでは執拗に戦い、根深い恨みをかったのである。そして戦後フランスは植民地に対する謝罪の一環として、旧植民地諸国からの移民を大量に受け入れる事になった。

このため現在のフランスの移民は、アルジェリア・モロッコ・チュニジアの北アフリカマグレブ諸国の3ケ国だけで3割を超える。また他の北アフリカ諸国出身者も、合わせると半数を超える。そして次に多いのがEU加盟国からの移民で、ポルトガル・スペイン・イタリアの3カ国で20%を占めている。

しかしドイツはほとんど植民地を持たず、WW2の敗戦国だ。その背景から中東やアフリカ諸国から移民を受け入れる必要がなく、大半は欧州系である。2013年ドイツ統計局の資料によれば、70%超が旧東ヨーロッパ地域を中心とした欧州諸国からの移民で、次いでアジアや米州が多く、アフリカや中東系は非常に少ない。

つまりフランスは歴史的背景から、アラブ系の移民が多いのである。アラブ系の移民は大部分がイスラム教徒であり、不本意ではあるがイスラム過激派とつながりも懸念されるところだ。

ドイツの移民は不満が少ない?

そしてこの両国を比べると、経済状態がかなり異なる。フランスの経済成長率は1.1%、失業率は10%を超えている。特に移民の失業率は16.1%と高く、非移民の8.5%と比べ倍近い。更に移民の中でも格差が大きく、アフリカ系は20%を超えているがヨーロッパ系は8%程度である。

対するドイツの経済成長率は1.58%、失業率は5.0%しかなく、しかも移民も非移民もほぼ同じ失業率となっている。

歴史的背景に加えて経済状況でも、ドイツにいる移民よりもフランスにいる移民の方が大きな不満を持ちそうである。フランスで大規模なテロが起きているのに、ドイツでは起きていない。これらの不満がすべての原因とは言い切れないだろうが、大きな原因のひとつではないだろうか。

メルケル首相、シリア難民80万人受入れは継続されるのか[2015年9月発表]

ドイツは好調な経済と巧みな移民政策で、いままでは成功を収めて来た。少子高齢化が進むドイツで、移民を受け入れ続けていく事は重要な課題である。特に優秀な教育を受けている者が多いと言われるシリア難民は、日本の昔の言葉で述べると「就職列車に乗って上京して来た、金の卵」かもしれない。

ところがドイツのメルケル首相は、2015年9月にシリア難民80万人を受け入れると表明して当時称賛を浴びた。しかしながらパリのテロを受けて、世論は大きく動いている。テロ発生からまだ日が浅いので大きな動きは見えないが、そのままの移民政策を続ける事が難しいことだけはたしかだろう。ドイツの動きはVW不正問題を例に、欧州全体いや世界の動きにリンクしている。そのドイツに巧みな舵取りを世界中が期待しているのは間違いないだろう。

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この記事へのコメント 6

  • 櫻井 順平 のプロフィール写真 櫻井 順平 より:

    ドイツの難民受け入れ施策も、極めて政治的・経済的な利益が根底にあった。難民受け入れといえば聞こえはいいが、所詮各国の都合のよい受け入れ方しかしないのでしょう。政治家にも国民を守り、経済を繁栄させるという使命があるので仕方ないことかもしれません。

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  • Zenn のプロフィール写真 Zenn より:

    日本から見るとヨーロッパへの難民はみな同じように見える。日本での報道もとくに難民を区別しないものが多い。
    歴史的な観点から理解していかないと、フランスとドイツでの難民の違いはわからない、ということが分かってとても参考になった。ということは、いままさに歴史に遭遇しているということかもしれない。

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  • あい。 のプロフィール写真 あい。 より:

    難民自体を受け入れるのが、危険なのではなく。どの国の、どんな層の難民が危険かということですか。
    難民ではなく、自国民でも言えるかも。国家を維持してくれる、善良な生産性の高い国民は増えて欲しいけど。
    悪逆で生産性の低い、犯罪者予備軍は増やしたいとは思いませんから。
    それが、難民だったら。尚更、顕著に思ってしまうのかも。

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  • kisetu-ju のプロフィール写真 kisetu-ju より:

    シリアの二極化を読んでみると、貧困な人は難民にもなれない。富裕層だけが逃れられる。それも難民として。
    シリア人は非常につらい選択です。軍事勢力における治安の悪化もあり、国を逃れたいとしてもそれすら許されないこともある。シリアの人々の心穏やかな日が早く訪れますように祈るばかりです。

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  • Sine のプロフィール写真 Sine より:

    ドイツが難民を受け入れるのは、難民の方が安い賃金で働いてくれるし、ドイツ人が嫌がる仕事でも難民たちはしてくれる。
    でも、フランスとドイツについての差は、やはり第二次世界大戦前後までにおける植民地である。
    フランスは、イギリスと並んで世界中を特に西アフリカを植民地にしていたし、インドシナでも独立運動について認めず、執拗に
    独立をさせないように戦争をしてきた。一方、ドイツは、第一次世界大戦において敗戦国となり植民地を全部手放し、植民地
    していた国や地域にそれほど影響を与えているというわけでもない。
    今の、シリア問題も第一次世界大戦におけるオスマントルコの領土分割支配から招いた結果なのだから責任は、基本的に
    フランスとイギリスにある。

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  • supipi のプロフィール写真 supipi より:

    多くのドイツ人は第二次大戦の反省と戦後の教育から本当に難民を助けたいと考えています。ただ、他者への理解と正しい行動を推し進めることの難しさに直面しているのだと思います。この先どう進めばいいのか、ドイツ人自身の模索が始まっているところでしょう。今後が気になります。

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