ドイツにおける再生エネルギー事業拡大がもたらす恩恵と「ひずみ」

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急進的な再生エネルギーへの転換を目指していたドイツ

 2011年の福島第一原子力発電所における事故以来、ドイツは脱原発政策を開始し、現在もドイツ国内のエネルギーの割合は原発に大きく頼らないものとなっている。原子力を排したドイツが推し進めているのは、風力発電などを中心とした再生可能エネルギーの拡充である。

 実際、2015年3月にはメルケル首相自ら、「ドイツは再生可能エネルギー拡大の道を歩んでいる。日本にもそうなってほしい」といった趣旨の発言を行い、国を挙げての再生可能エネルギー拡充を進め続けている。2012年には、2030年までに国内の発電量のうち再生可能エネルギーの占める割合を50%にまで引き上げるという目標値の設定を行い、再生可能エネルギーが国内の発電量に占める割合は年々高まってきている。

 しかし、急進的な再生可能エネルギーへの転換を行うあまり、現在ドイツ国内ではエネルギー構造の転換による「ひずみ」が、様々な形で発現してきている。ドイツにおいて、再生エネルギーへの転換は果たして成功するのであろうか。

2000年に可決した「再生可能エネルギー法」が起点

 ドイツにおいて再生可能エネルギーが国内の電力をまかなうようになり始めたのは、なにも福島第一原発の事故以降のことではない。原発事故の10年以上前、2000年に可決したいわゆる「再生可能エネルギー法」の中で、ドイツは2050年までに国内の発電量の60%を再生可能エネルギーで生産することを規定していた。福島第一原発の事故は、この大きな潮流をより強固にする契機にはなったものの、エネルギーミックス自体はそれよりずっと前から行われてきたものなのである。

 以下の表に示す通り、ドイツにおいて全発電量のうち再生可能エネルギーが担う割合は、再生可能エネルギー法以降から少しずつ増えはじめ、2015年には30%を超えるまでになった。さらに、表に示した通り2020年には40%を超えるという試算もあり、2050年までの目標値である60%も見え始めてくることが予想されている。

着実に進められるエネルギー転換

 福島第一原発の事故以降、ドイツは脱原発の姿勢をいち早く表明した先進国となった。「3.11」の時点で、ドイツでは17基の原発が稼働中であったが、原発事故後すぐに1980年以前から稼働していた7基の稼働を停止させ、国内のエネルギー転換を行う姿勢を示した。結果的に「3.11」は、ドイツにおいて再生可能エネルギー法をより推進させる契機にもなり、「3.11」以降に脱原発を明確に打ち出したメルケル首相を中心として国家全体がエネルギー転換へとより迅速に歩みだすこととなった。

 ドイツにおいて脱原発が促進されて再生可能エネルギーがシェアを伸ばしている背景として、再生可能エネルギー法の中に「固定価格20年間全量買い取り(FIT)」が定められており、それが価格や制度を変えながらも現在まで続いているということも挙げられる。

 事実、最も買い取り制度の恩恵を受けることができる太陽光発電に関しては、2000年から2014年にかけて発電量がおよそ400倍にまで成長した。「3.11」以前の再生可能エネルギーの伸長に対して、この制度は非常に大きな役割を果たしたと言えるし、「3.11」以降に関しても脱原発を後押しするだけの影響力を持ち続けている。

 ドイツ国内において再生可能エネルギーはもはや電力の主要な供給口であり、ドイツ国内には風力発電所の大きな風車や、ソーラーパークと呼ばれるソーラーパネルを多数設置した発電施設などが各地に作られている。エネルギー転換が着実に進められたことで、再生可能エネルギーはドイツ国民の生活にしっかりと根付いているのだ。

>>次ページ
再生エネルギーの拡大がもたらした「ひずみ」とは?

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この記事へのコメント 2

  • Salzbrezel のプロフィール写真 Salzbrezel より:

    電力を作るまではいいが、運ぶのに手間とコストがかかってしまうとのこと。
    山がちな日本でも送電線網の整備が一番の課題のようですね。

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  • Arei のプロフィール写真 Arei より:

    ドイツ国民の世論調査がすごいと思う。再生可能エネルギーを国民の8割以上が支持している。

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文蔵 一郎 のプロフィール写真
1989年北海道生まれ。北海学園大学法学部卒業後、官公庁に入庁し2年ほど実務を経験する。在職中に一念発起しフリーライターとして独立することを決意。退職後「元公務員ライター」として2016年から独立。大学時代から国際政治を専攻しており、幅広い見地と視野から国内外の政治経済の動向を見定められるよう奮闘している。


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