フォルクスワーゲン問題は順調なドイツ経済の息の根を止めるのか

今年9月に発覚した、フォルクスワーゲン社(以下VW社)による排ガス不正問題。発覚から3ヶ月近くが経過した現在でも、不正に関連して関係者による脱税疑惑が取りざたされるなど、事態収拾の見込みは全く立っていないのが実情である。

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経済的損失は確実に2兆円を超える

対象の車両は全世界でおよそ1,100万台にもおよび、補償や制裁金、対策費用などを全て合わせると2兆円以上もの金額になるという試算も発表されている。問題はもはやVW社1社のものではなく、ドイツの自動車産業全体に波及する巨大なスキャンダルとなってしまった。

言うまでもなく、VW社はドイツの3大自動車メーカーの一角であり、ドイツの自動車産業の基盤を支える企業である。そこに最大で2兆円以上もの経済的損失が襲いかかるのであるから、ドイツの自動車産業には巨大な打撃となるのは必至。そして、自動車業界が傾くということは、昨今順調であったドイツ経済に暗い影が落ちてしまうということでもあるだろう。

果たして、VW社の問題は、順調に推移していたドイツ経済の息の根を止めてしまうことになるのだろうか。

財政黒字にも当然寄与するドイツの自動車産業

ドイツが2015年度の決算において、46年ぶりに財政黒字を達成する見込みであるということは、以前の記事でお伝えしたとおりだ。ドイツの財政黒字達成までの道のりは、国内の自動車産業の継続的な好調なくしてはありえなかったことである。

統一以降、ドイツの名目GDPは以下のようにほとんど落ち込みを見せることなく成長し続けてきた。

ドイツ名目GDPの過去推移世界経済のネタ帳

2009年にはリーマンショックの影響もあり一瞬の落ち込みを見せたものの、ドイツはEU圏内でもいち早くリーマンショックから立ち直り、国民性に即した堅実な成長を続けてきたのである。

このGDPの成長率をけん引したのは、主にエネルギー産業と自動車産業である。特に自動車産業は、主に輸出の方面において重要な役割を果たしてきた。ドイツの輸出品目において、自動車およびその部品が占めるシェアはなんと14.5%もあり、貿易において中心的な役割を果たし続けてきたのである。

以下のように、ドイツは貿易収支に関しても黒字を保ち続けてきた。

ドイツの貿易輸入額の推移UNCTAD

貿易収支において黒字が続いたことは、もちろん2015年度における財政黒字達成にも大きく寄与していると言える。ドイツにおける自動車産業は、まさに輸出を支える大黒柱なのだ。

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VW社の行為は「メイドインジャーマニー」を奈落の底に落とした

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文蔵 一郎 のプロフィール写真
1989年北海道生まれ。北海学園大学法学部卒業後、官公庁に入庁し2年ほど実務を経験する。在職中に一念発起しフリーライターとして独立することを決意。退職後「元公務員ライター」として2016年から独立。大学時代から国際政治を専攻しており、幅広い見地と視野から国内外の政治経済の動向を見定められるよう奮闘している。


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