「高福祉国家」ドイツから見える日本の福祉計画の未来
「高福祉国家」が破綻する明日
そんなドイツにおける福祉施策にも、もちろん課題がないわけではない。ドイツでは2050年ごろに国民の平均年齢が50歳を超えると言われており、高齢化に歯止めがかかる気配は全くないのが現状だ。より中長期的なビジョンで財源の確保と福祉施策の両立が行われなければ、前述した「見える化」はあっという間に失われてしまうだろう。
高齢化以外にも福祉施策における課題は多数存在する。ドイツ国内でも格差社会がここ15年以内で急速に進行しており、2008年の段階で国民の相対的貧困率は14%を超えている。そんな中で、ドイツ財政の健全化における一環として、公的扶助制度への歳出も削減が余儀なくされた。
このことは福祉団体やNPOの活動に打撃を与え、EU圏内でも有数であった貧困層への大きなセーフティネットが縮小してしまうことにつながった。奇しくも財政健全化の途上で顕在化した格差社会の問題は解決の糸口が見えて来ず、今後もドイツにおける福祉施策の新たな課題として議論されてゆくだろう。
このほかにも、障害福祉において「社会生活への完全参加」を掲げるドイツが、現実的にこの問題をクリアできるか、介護保険制度を高齢化の進行によって今後どう運用していくのが適切なのか、などの諸問題がドイツの社会福祉には山積している。現状は「高福祉国家」であるドイツが、20年後、30年後までその看板を掲げ続けることが出来るか否かは、不透明な部分も多いと言えるだろう。
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